前沢公民館の上の山林に観音堂が建っております。それにまつわるお話があります。下館城の水谷蟠龍斎は田野城の羽石内蔵助を攻め滅ぼし領地を奪いましたが前沢村の上野平右衛門は従いませんでした。そこで蟠龍斎は広沢重宗に平右衛門の説得を頼み降伏しない場合は斬り殺せと命令しました。平右衛門に何度も説得しましたが聞き入れず涙を流しながら斬り殺しました。蟠龍斎は平右衛門の屋敷を重宗に与えました。重宗は屋敷に移り住んだところ白い蛇がどこからともなく出てきて何度も何度も見かけるので気味が悪くなり蛇を殺しました。ところが殺したはずの白い蛇が屋敷の中に出てくるので誰かが食べてしまえば出ることはないという話を聞き家来達に全部食べさせましたが鍋に残った汁を捨てるとまた出てきました。それを見た重宗は平右衛門の怨霊だと考え御堂を建て観音様を安置し平右衛門の冥福を祈ったら白い蛇は出てこなくなったというお話です。御堂の格子窓から中を窺うと中央に厨子があり恐らく中には観音様がおられるだろうと思いました。安土桃山時代作なので現存すれば貴重なものです。そして重宗が殺した平右衛門に対して心を砕いた末の御堂と観音様なので他所の御堂と観音様とは別格に受け取りました。

• 訪問日：2023.07.22