宇都宮市
酒蔵は鬼怒川のほとりにある。水とお米が美味しい場所だ。六代目のご主人は私と同世代である。新潟の緑川酒造で修行後,地元に戻ってきたらしい。酒造りに熱心であることはもちろん,日本酒文化の普及そのものに努めている。裾野を広げるべく,代々酒蔵に引き継がれてきた清酒「新郎」を,「Premium SINRO」としてイメージを刷新。ラベルとボトルにこだわり,ワインのような見た目は目を引く。ともすれば日本酒は男性が好むものという固定観念を打ち破ろうという意気を感じる逸品だ。 また日本酒を手にする際にネックとなりやすいのはその量である。少なくとも四合(七百二十ミリリットル)という量は,初めて買うにはいささか冒険かもしれない。数人で空けるのに適当な量であろう。 しかしながら,感染症拡大に伴い,日本酒好きといえども,なかなか大っぴらには集まりにくくなった。そこで六代目が考え付いたのが百ミリリットルの小瓶での販売だ。これなら一人飲みにも良い。事実上,試飲できるのと同じだ。気に入ったら多めに買って飲んだらよい。経済的にも助かる。個人的には,他の酒造でもやってほしい。 「かんなびの里」は種類がいくつかある。日常的に飲む本醸造はぬる燗で,ちょっとしたお祝いに飲む大吟醸は冷酒がお薦めだそうだ。寒造の直前の一番搾りは十二月の限定品で,芳醇な甘みとふくよかさがあって美味しい。 六代目が日本酒の苦手な人に薦めているのは,ジンジャーエールで割る方法だ。日本酒本来の旨味を損なうとの意見もあろうが,そこはまず日本酒を好きになってもらうことが大事だという点に共感する。割る比率は一対一がお薦めだそうであるが,結局は各人の好みに帰する。 職人の手作りでそれほど流通していない。購入方法はホームページの銘柄紹介の下のテキストリンクからオンラインで購入するか,酒造に直接電話する二択だ。面倒でも後者の方が,一番搾りなどについては融通を利かせてもらえるのでお勧めである。 同じお酒を語り合える同志が全国に増えたら嬉しいと思い口コミをここにのせる。