小山市
県道沿いにヤマザクラ(茂木町天然記念物)が根を下しております。古木の幹が幾重にも広がり厚みがあります。このヤマザクラに伝わるお話があります。この近くに住む産婆さんがおりました。この小山では子供をとりあげてもらっている人ばかりの有名な婆様です。ただ小山は貧しいところで妊娠してもお姑さんに働かされたりして子供が亡くなったり母子ともに命を落としていたそうです。この頃に産婆の婆様の口利きで目の見えない爺様と暮らす住吉という若者にミヨという娘が嫁入りしました。働き者のミヨはやがて身籠りましたが貧しい家に産まれてくる子供をふびんに思い前にも増して働きました。小さな体のミヨが大きなお腹をして肩で息をしながら働いていたので産婆の婆様はハラハラしながら見ていました。そして産み月まで間がある或る日のことミヨはついに倒れ顔色は悪く息遣いは荒くなりました。産婆の婆様はミヨの子供をとりあげることができなくミヨも我が子と一緒にあの世に逝ってしまいました。産婆の婆様は落胆し仕事を辞めることを決意しヤマザクラの木の根元にミヨの櫛を埋めました。やがて新しい芽が数本出て柔らかい若葉が産まれたての赤ん坊のようで婆様はミヨの子が桜に生まれ変わったと喜びました。そのことが伝わり元気な子供を産んだ嫁は桜の木の根元にお供え物をして無事を祈り子供に恵まれなかった嫁はココへ来て気持ちを静めていきました。そのうちにヤマザクラのはじめの幹は枯れましたが根元の周りには新しい若木が育ち次々に花を付けていったので小山の千本桜ともよばれるようになったというお話です。ヤマザクラの生命の息吹が小山に住む人々の心の拠り所となった素晴らしいサクラです。