「子育てハッピーアドバイザー」山本果奈さん×栃木県で活躍する子育てのスペシャリストによる対談。質問や取り上げて欲しい人募集中。プレゼントも♪
【vol.10】「裏千家齋藤茶道道場」 吉岡 宗美さん
ずっと自由で、ずっと深い!
宗美 茶道ってどんなイメージがおありですか?
果奈 う~ん、正座をちょっと崩すとピシッ!みたいな(笑)。うちはやんちゃな男の子2人なので、ちょっと縁遠い習い事かなと。
宗美 皆さん、そんなイメージですよね(笑)。私の甥2人と息子も一緒に稽古しているので、わかります。キッズクラスだと、畳でゴロゴロしてる子もいますよ。
果奈 え?ゴロゴロですか?叱られないんですか?
宗美 畳の感触を味わうことも大切だなと思って見てます。
果奈 う~ん。イメージと違いすぎて驚きです。
宗美 じっと見守っていると、子どもたち自身が自分で気づいて、ちゃんとできるようになるんですよ。この「気づき」こそが学びなんです。多少時間がかかりますが。
果奈 確かに誰かに教えてもらった知識より、自分で気づいて得た知識のほうが、何倍も心に残りますよね。
宗美 もちろん、お作法やお点前も習います。でもそれ以上に、それらを通したものの見方や感じ方、考え方などを学ぶものが茶道なんです。
果奈 なるほど、それは深いですねぇ。
宗美 もしかしたら茶道って、みなさんの抱いているイメージよりも、ずっと自由で、ずっと深いものかもしれませんよ。今、私の子は4歳なのですが、子育てを通して、子どもたちにこそ茶道を学んでもらいたいと、改めて感じるようになりました。
果奈 急に茶道に興味が湧いてきました。今日はいろいろ教えてください!
『表面的効果』と『内面的効果』
宗美 茶道には、『表面的効果』と『内面的効果』、2つの効果があると考えています。
果奈 具体的には、どういったことでしょうか?
宗美 まずは『表面的な効果』です。わかりやすいのは、お点前を通して養う集中力、和室でのマナーや所作、礼儀作法。大人と同じ席に着き、大人と同じ言葉を使って稽古することで、正しい言葉使いと相手への気遣い、人とのコミュニケーション能力も育ちます。また、ある程度続けていくときちんとした許状(資格)をいただけますので、小さな子どもたちにとって大きな自信につながると思います。
果奈 これだけでも、茶道を習わせたくなっちゃいますね。
宗美 稽古は、「人日」「上巳」「端午」「七夕」「重陽」といった五節句をはじめ、四季折々の年中行事を身近に感じられるものでもあります。今失われつつある日本古来の伝統文化に触れる機会はとても貴重だと思います。
果奈 お正月のおせちも作らなくなってきて、畳のないおうちも多いですよね。大人の私達でさえ忘れかけている気がします。
宗美 これから国際化がどんどん進んでいく中で、日本人としてのアイデンティティをしっかりと培うことは、子どもたちにとって大きな拠り所になるのではと思います。
果奈 では『内面的効果』とはどんなものでしょう?
宗美 言葉にするのは難しいのですが、感受性を高め、他者を思いやれる心、今を感謝し、自分自身の芯を持って生きる心が育ちます。
果奈 それは人として、とても素晴らしい資質ですね。でも先生は、目に見えないものをどうやって教えるのでしょうか?
宗美 例えば夏、滝をモチーフとした軸を掛けておきます。子どもたちは、それを見ることで、滝壺に落ちる水音を聞き、水面に跳ね返った水滴を感じ、さぁっと涼しくなったような気持ちになります。そして、涼しさを感じて欲しいと思った亭主の心遣いに気づくのです。私はヒントを与えて、その気づきを導きます。目に見えないことを教えるのですから、教科書はありません。1人1人が自分自身と対峙することで、内側から気づくことが学びなのです。
果奈 なるほど。心遣いに気が付かない人は、心遣いのできる人にはなれません。それは、"思いやり”という言葉にも置き換えられます。気づくことの大切さを改めて知りました。でも、子どもにはちょっと難しいのではないでしょうか?
宗美 そのためキッズクラスでは、スケッチを取り入れています。本来は、稽古でメモなどを取るのはタブーなのですが(笑)。軸や活けられた花を、じっと観察し、模写しているうちに、意識が内に向き、感覚が研ぎ澄まされていきます。畳の感覚、衣擦れの音、軸や花の美しさ、お茶の香り、甘いお菓子の味…。五感が鋭くなり、いろんなことに気づきやすくなります。
果奈 五感を刺激するのは自然体験だと思っていましたが、心を内に向けさえすれば、様々な刺激を感じることができるんですね。日本本来の生活には自然が溶け込んでいて、より感じやすいのかもしれません。
宗美 そうした何気ない毎日に価値を見出すことができれば、今を感謝する心が育まれます。当たり前のことを当たり前にすることの大変さや大切さ、ありがたさに気づき、謙虚な心が生まれるのです。
果奈 茶道が、いかに子どもたちの心を育んでいくのかがわかりました。いろんなことに気づくことで、思いやりあふれる、優しい子に育ってくれそうですね。
宗美 世の中は、陰と陽のバランスで出来ています。表面的な部分と内面的な部分、どちらか一方では偏った人間になってしまうので、両方を同時に育てていくことが大切です。その両方を鍛えられるのが茶道です。だから私は、まだまだ柔軟な子ども時代にこそ、茶道を学ぶべきだと思っています。
ママへ、3つのメッセージ
果奈 キッズクラスで長く子どもたちを教えてきて、また実際に子育てをする中で、ママたちに伝えたいことってありますか?
宗美 第一に、もっと見守ってほしいということです。今の時代、流れがすごく速い。でも成長過程の子どもたちは、初めてのことだらけ。モタモタしているように見えてしまい、ママはついせかしたり、先回りしたくなっちゃうんです。でも、じっくり見守ってあげてほしい。子どもは必ず答えにたどりつきますから。
果奈 待つというのは、想像よりも難しいもの。まして我が子となれば、良かれと思って手を出したくなってしまうんですよね。でも、そこはぐっと我慢ですね。
宗美 それから第二に、子どもこそ型にはめてほしいということです。これは、私が修業時代に言われた言葉でもあります。まず型にはまる。はまりきって自分のものにしたからこそ、破ることができるんです。例えば、挨拶やお箸の持ち方、最低限のマナーは何度でも教えてきっちりやらせる。既存のルールに反発する前に、まずは敬い従う。この姿勢が足りない子どもが、増えている気がします。
果奈 確かにおっしゃる通りですね。反発心が大きくなる高学年や思春期になってからでは、遅いのかもしれませんね。
宗美 そして最後に、ママも日々を大切に過ごしてほしいということです。生き方とは本来、親から学ぶもの。パパやママが、「月がキレイだね」「霜がサクサクするね」「つぼみが大きくなってきたね」と、日々の変化に気づくことで、子どもは自然とそうした生き方を身に付けます。
果奈 私は人事として、毎年沢山の学生を面接しているのですが、最近、想像力の足りない子が増えていると感じていました。「これを言ったら、どう思われるかな」「こんなことをしたら、周りの人はどう感じるかな」ということに気づかないのです。そういったことを想像できないと、誰の事も共感できないし、誰からも共感してもらえません。共感こそが、人間関係を円滑にする大切なスキルなのに。彼らは人間関係をうまく構築できず、挫折してしまうことが多くなります。今回、この問題の解決の糸口が、茶道にあると知り、とても驚き、感動しました。
宗美 茶道だけではありません。華道、書道、香道など、道とつくものの根本は一緒です。師について、生き方を学ぶもの。その学びに、終わりはないのです。日本が誇るこの美しい精神を、皆さんが日々の中に取り入れ、一緒に後世へと紡いでいただけたら、とても嬉しいです。
※1)お作法をわかりやすく、楽しく教えてくださる宗美先生。
※2)茶室に入る前に、蹲踞(つくばい) で、手を清めて、口をすすぎます。
※3)実際のキッズクラスの様子。小さな子どもたちがたくさん通っています。
スペシャリストへのQ&A
●「何歳くらいから学べますか?」(おかぴ/20代)
宗美 一般的に、言葉による指示が通るようになる年中や年長さんから始める方が多いです。畳の上で正座することは、椅子に座る普段の生活と目線も感覚も大きく違いますので、小さいうちに始めた方がスムースに馴染めると思います。
●「興味はあるのですが、子どもが長時間正座できるか心配です…」(たもさん/30代)
宗美 今の子どもたちは足首が固く、親指を重ねる正しい正座ができない子が増えています。そのため私の教室では、畳でも椅子を使って、少しずつ時間を増やすなど、無理のない範囲で正座をさせています。ただお教室によって考え方がありますので、一度聞いてみるのがいいと思います。
「スペシャリストへのQ&A」では、質問を募集しております。
vol.12のスペシャリスト:整理収納コンサルタント/小堀愛生さん
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「裏千家齋藤茶道道場」 吉岡 宗美(よしおか そうみ)
本名 むつみ。1977年生まれ宇都宮育ち。京都女子大学短期大学、裏千家学園茶道専門学校卒。裏千家業躰 戸田宗安氏・お父さまである、齋藤宗琢氏に師事し、茶道を学ぶ。現在、宇都宮と渋谷自宅にて、茶道教室とキッズクラスを主宰。また、ロータリークラブ支援の交換留学生への茶道指導員も務める。妹さんと一緒に開校しているキッズクラスは、茶の湯を通して和のマナーから日本人としての心の在り方を楽しく学んでもらい、一人一人の内なる個性を焦らず見守り育んでゆくのがモットー。4歳の男の子の母。B型。
◇保有資格◇
裏千家準教授・栄養士・フードコーディネーター
≫オフィシャルサイト:「裏千家齋藤茶道道場」
≫FBページ:「そーみ茶懐石料理教室」
子育てハッピーアドバイザー 山本 果奈
15年間に亘る人事採用の仕事を通して、大人になってからぶつかる心の問題の深刻さに気付く。自身の子育て経験も重なり、人格形成における子育て時代の重要性を知り、幅広く知識を探求。現在、「アンガーマネジメント」や「子育てハッピーアドバイザー」の資格を獲得し、生きづらさの改善、自己肯定感の大切さを伝える活動をしている。
◇保有資格◇
アンガーマネジメントコンサルタント/アンガーマネジメント キッズインストラクタートレーナー/子育てHATマイスター/全米NLP協会認定マスター心理カウンセラー 他多数
◇研修、セミナー実績◇
茨城県教育委員会/富士ゼロックス株式会社/栃木県立野沢特別支援学校/栃木県立国分寺特別支援学校/栃木県老人保健施設協会/ネッツトヨタ栃木株式会社 他多数
≫Facebookページ:「子育てハッピーアドバイザー」山本果奈
お店・スポット情報
取材:2017年11月
※掲載内容は取材時の情報です。
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